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編集後記
「This is me.」
偶然バスで隣り合わせた西洋人らしい男性が、そう言った。一瞬なんのことかわからなかったが、停留所で降りるようなので、僕も一度席を立って彼を見送った。もう1年以上前のできごとだが、このときのことは、今でも強く記憶に残っている。なぜなら彼が口にした「This is me.」という表現が、「向かう先(つまり未来)=自分」であるかのように聞こえ、清々しくポジティブな気持ちになったからだ。
Web3、NFT、メタバース、SDGs、脱酸素、自動運転、スマートシティ。この数年、社会を前へ進めようとしているキーワードをいたるところで目にするものの、自分はどこかその流れの外にいるように感じていた。あなたはいかがだろうか。もしかすると、未来への流れに乗れず、疎外感を感じていたからこそ、「This is me.」から未来へとつながる光明のようなものを感じたのかもしれない。
今号に掲載している「100年後の建築につながる風景」や「2020年代の建築をとらえる言葉」では、はっきりと見えない遠い未来まで想像を飛ばすことで、垣間見えてきた風景や言葉を紹介している。また、「かたちが語るとき」や「ポストバブルの建築家展」での展示では、肯定的に語ることが途耐えてしまったかように見えるバブル期以降の建築のかたちに着目することで、もう一度かたちをいきいきと語る未来を提示したように思える。
どれも刺激的な内容にまで練り上げられたのだが、それぞれのコンテンツに共通しているのは、今の自分たちの足元に目を凝らすことで、そこから未来へとつながる道筋をとらえていることである。この道は自分と未来をつなぐ希望だ。僕があの日の「This is me.」から感じた希望を、あなたにもこの号から感じてほしい。
岡本雄大
建築設計10 目次
2 Editor's Note
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3 100年後の建築につながる風景
−日本建築設計学会理事それぞれの足元から−
4 隈 研吾 34 五十嵐太郎 66 小見山陽介
5 石原健也 35 萬田 隆 67 長坂 大
6 乾 久美子 36 河井敏明 68 篠原聡子
7 畑 友洋 37 曽我部昌史 69 千葉 学
8 竹山 聖 38 岡河 貢 70 遠藤秀平
9 西沢立衛 39 林 陽一郎 71 光嶋裕介
10 芦澤竜一 40 上野 武 72 堀口 徹
11 末廣香織 73 竹口健太郎
12 松本 明 74 團 紀彦
13 亀井暁子 75 島田 陽
14 木下 光 76 末包伸吾
15 宮本佳明 77 トーマス・ダニエル
16 前田茂樹 78 宇野 求
79 手塚貴晴
80 国広ジョージ
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17 2020年代の建築をとらえる言葉_1
18 見取り図
41 2020年代の建築をとらえる言葉_2
44 座談会 | 小見山陽介、岩元真明、川島範久、能作文徳
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46 アジール・フロッタン復活プロジェクトから生まれたフランスと日本の展覧会 | 遠藤秀平
47 [速報] アジール・フロッタン復活展
48 かたちが語るとき −ポストバブルの日本建築家 1995–2020−
50 沈まない日本建築 | クリスチアン・ジラール
52 無言の声 | トーマス・ダニエル
56 「かたち」をめぐるディスカッション | 竹山 聖
58 ポストバブルの建築家展 −かたちが語るとき−
60 展示デザインについて | 竹口健太郎
62 建築と絵画芸術の往来による「かたち」への飽くなき探求 | 光嶋裕介
63 かたちの声に耳を澄ます | 島田 陽
64 35組の「かたちとは何か」
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81 速報 2021年度第4回日本建築設計学会賞
82 活動報告
84 賛助会員情報