建築設計 11号 「かつて星々を線で結んだように」

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編集後記
「かつて星々を線で結んだように」


昨年、3才の息子が夜空に浮かぶ月に向かって「おやすみ」と声をかけたことがあった。僕はうれしくもあり懐かしい気分になったことを覚えている。彼は生物かどうかもわからない惑星でも、話そうと思えば寝る前のあいさつだって交わすことができるのだ。

2022年のFIFAワールドカップ中、人権問題に声を上げる選手たちの行動をFIFAが認めないというニュースが流れた。これは僕にとって大きなショックだった。日本が勝っても、心の底から喜べなかったのは僕だけではないはず。今日、そんな感情はどこにだってある。生産者が安価な労働を強いられる大量生産のチョコレートを食べるときだってそうだ。居心地の悪さを感じる。その背景には、僕たちの日常生活に多量で多様な情報がなだれこんでいることがある。情報が複雑に絡まることで、一つひとつの物事がさまざまな意味をもつようになったのだ。

そんなときに思い出す言葉がある。「情報が氾濫する時代において、究極のラグジュアリーとは意味と文脈だ」という『WIRED』US版の創刊時に出されたマニフェストだ。ここでの「意味と文脈」とは多くの人が共有するひとつのものではなく、みんな一人ひとりがそれぞれにもつものだと僕は理解している。居心地の悪さを払拭するには、各々の好奇心や関心が向かう先にある物事を丁寧に解きほぐし、そこに自分だけの意味と文脈を見つけ出す必要がある。それができれば、僕たちの好奇心はさらに広がっていくだろう。

本号に掲載したコンテンツは寄稿者たちがそれぞれに意味と文脈を見つけ出そうとした記録である。特に第4回日本建築設計学会賞の頁では審査員からの講評を受け止めた上で、受賞者たちから建築家としての視座を寄稿してもらった。これは賞を通して作品が評価されることやそこで起こる審査員との対話から彼らが意味と文脈を読みとったものと言えよう。その他の頁も先人たちや難民避難船、木造建築をそれぞれに咀嚼し、そこに意味を見た上で、未来へ向けてアウトプットしたものである。

ある物事からその隣の物事へと僕たちの好奇心は点と点を結びながら広がっていく。星が輝くだけだった夜空に、はじめて星座が描かれたときのようだ。ただの点と点が線で結ばれ、自分だけの意味と文脈をもった絵柄ができあがる。僕たちには好奇心さえあれば上にも下にも縦横無尽にその線を引くことができる。この地球や月が浮かぶ宇宙空間と同じく、線を引くことにおいて僕の息子に上下の区別などないくらいに。


岡本雄大



建築設計 11 目次


     2  Editor’s Note

     4  第4回日本建築設計学会賞
        [作品]
6、17、18   【大賞】「出窓の塔居」藤 貴彰+藤 悠子
8、17、22    「TETUSIN DESIGN RE-USE OFFICE」平瀬有人+平瀬祐子
10、17、24   「松原市民松原図書館」高野洋平+森田祥子
12、26、32  「湖月庵」芦澤竜一+陶器浩一
28、32、34  「House OS 3つ屋根の下」神谷勇机+石川翔一
30、32、36  「甲陽園の家」畑 友洋

    14    竹山 聖「驚きと喜びと、そして希望と」
    38   審査過程


    40   石井修 生誕100年記念展
    43   倉方俊輔「石井修論 – 安らかな住まいをめざして」
    47   木下光「石井修生誕100年記念展後記」


    49   中村勇大・追考
    50   座談会「開かれた京都人、中村勇大の建築」
      [作品]
    56    「明石の家」
    57   「ST-1 斜めテラスの家」
    58   「かむかふ」
    59   「此花の長床」
    60   「PF-6 PIST」
    61   「さやどう」

    62   小池志保子「建築家 中村勇大の一連の住宅作品」
    64   プロフィール、作品歴、受賞歴


    65   アジール・フロッタン復活展
        ─ル・コルビュジエと前川國男が残した浮かぶ建築─
    68   五十嵐太郎「アジール・フロッタンをめぐる国内外の巡回展」


    70   アジール・フロッタン物語展
    72   ル・コルビュジエの船再生委員会「次のステージ」


    75   Timber: Today and Tomorrow
        木造建築のいまとこれから


    81   連続インタビュー 関西の建築家たち03 前編
        足立裕司「毛綱毅曠を巡る関西・建築の四方山話」


    90   活動報告


    92   賛助会員情報

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